今回は機械式時計にはなくてはならない重要な部品、「香箱」についてお話ししたいと思います。
「香箱」というと上流貴族のたしなみの一つとして使われた「香」を入れるための蓋付きの箱を思い浮かべますが、時計の香箱は少し形状が違います。
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これがロレックスに使われている香箱です。実はこの中には動力源となる大切なゼンマイが入っているのです。

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このゼンマイを特殊な工具で巻き、そして中が空洞になったこの蓋付きの車の中にすっぽりと収めるわけです。

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機械によって香箱のサイズはまちまちなので、中に入るゼンマイも香箱のサイズによって専用のものが存在するわけです。

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これが香箱をバラバラにしたところです。
本体、蓋、芯に分かれます。
芯には爪のような突起があり、これにゼンマイをひっかけてグルグル巻かれて動力源を蓄えるわけです。

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そしてこれが香箱を地板にセットしたところです。
すっぽり収まっていますね。香箱の上には角穴車という車が乗せられ、リューズ操作によって角穴車が巻き上げられます。
角穴車は香箱芯の上部に取り付けられているので、芯を介してゼンマイを巻き上げていく、という寸法です。
機械式時計の部品の和名にはなんとも趣深いものが多いのですが、香箱もその代表格ではないでしょうか。
なぜ香箱とついたのかは不明ですが、上流貴族やご婦人の大切なみだしなみの一つとして重要な「香」を入れるための箱が、時計でいうところの心臓部のゼンマイを収納するための箱状の車にぴったりだと昔の時計職人がひらめいたからではないでしょうか。